2012年10月24日水曜日

ソフトバンクによるイー・アクセス/SpringNextel買収のインパクト

本件について、感じていることは色々あったのだが、以下の記事を読んで、やはりちゃんと整理しておこうという気になりました。
なお、タイトルに買収とありますが、ニュースリリースでは経営統合という表現が為されていましたが、実態としては正直買収と認識しました。そういったこともあり、買収と表記しています。
攻勢かけるソフトバンク、NTTドコモは縛りを解かれ世界企業に飛躍できるか
最後のページまで読み、「っていうか、誰が書いたんだろう?」と思ったら大前研一さんじゃないですか。ちょっと意外でした。
その意外な部分も含めて整理していきたいと思います。

インパクトその1

ソフトバンク内部と買収された側へのインパクトをまず考えてみたいと思います。
当然謳われている調達コスト削減効果は、よほどの事がない限り実現できると思われます。(注:よほどの事が起きそうな気配があるので、米下院の中国系通信機器メーカーいじめは要ウォッチでしょう)

ソフトバンクモバイル(あえてソフトバンクモバイルとします)は、iPhineあっての急成長だと言えると思います。「無かったら成長してないだろ!」とかそういう話ではなく、Vodafone買収の時に想定し得るベストケースよりも急激な成長を果たすことができているだろうということです。(事実、借金返済は大きく前倒ししました)
しかしSpringNextelはiPhoneを取り扱ってません。これをどう解釈するかは人によって別れるところかも知れませんが、ソフトバンクモバイルとしてはそれを上手く使ってくると思います。要は、『iPhoneなしでこれだけの契約を持っているのだから、iPhoneあったらどれくらい伸びるだろうね~』ということです。あ、もちろんiPadも上手く使ってくると思います。
具体的にはローミングという概念をぶっ壊して来るのではないかと思っています。日本でもアメリカでも変わりなくサービスが連続的に利用できる状態を作ってくるのではないかと思います。(ただ規制のところでも触れますが、一方通行な可能性はあります)
端末戦略とサービス戦略のオプションが広がるといえるのかなぁと思っています。
そういう面で、上記大前さんの記事にある
国内の携帯戦争は、ソフトバンクのイー・アクセス買収をきっかけに価格からサービスに競争の舞台が移ったことを示している。
というのは非常に同意できるポイントです。

イー・アクセスの買収によりイー・モバイルの通信基盤を手に入れたということは、周波数の厚みが増したということはもちろんあって、非常にインパクトがあるのですが、狭い日本の国土を考えると、基地局を敷設できる土地を獲得できたという見方をするとより長期的な安定を手に入れることになるかもしれません。(ソフトバンクどうやっても孫さん一代限りの企業だという認識もあるでしょうが)

総じて言うと、内部向けのインパクトととしては、市場環境への変化に対応するために取り得るオプションが増えたということじゃないでしょうか。

インパクトその2

ユーザーにとってのインパクトを考えてみたいと思います。
上述の、競争のポイントが価格からサービスに変わったという事象は、元々価格弾力性が比較的低いと言われてきた通信サービスですが、そうは言ってもインパクトがあったのですが、コレ以上は中々下げにくいというところにきている事から、サービスに変えざるを得ないということも言えると思います。また、ユーザーとしても、単に安いというだけでは満足しなくなったとも言えると思っています、

ではそんな環境において、ユーザーにとって、何が嬉しいサービスになるのでしょうか。
幾つか挙げられるとは思うのですが、その期待が通信キャリアに期待しているものでは無くなっているのではないかと思います。
かと言ってキャリアがやることが無いわけではありません。そこは様々あるのですが、正直商売ネタなので秘密にさせて下さい。抽象的な言い方をすれば、『黒子が舞台の出来を左右することもあるのでは?』という事でしょうか。
とは言っても目に見える変化を挙げさせていただくと、上述のローミングサービスの概念をひっくり返して日本国内のユーザーがアメリカでも使いやすいようなサービスが出てきたり、EMの基盤を活用して繋がりにくさの要因を一部除くことができることも確かだと思います。あとは、もう少し価格が下がるかもしれません。

懸念があるので挙げておくと、法人サービスはソフトバンクテレコムが行なっている部分が多いですが、EMの法人サービスとの統合がどのように為されるかが気になります。別の言い方をすると、auの法人営業部隊はこのタイミングでFixedとMobileのウマイ組み合わせのご提案を持っていけばシェアを一気に広げることができるでしょう。docomoはFixedの提案ができないので、チャンスはこれまでと変わらないでしょう。

インパクトその3

競争環境であったり規制に対するインパクトを考えてみたいと思います。
これが、大前さんの記事で凄く違和感のあった部分です。そこの解説を中心に考えてみたいと思います。

「ドコモとKDDIの合併という大技もあり得る」と大きく出たことを仰っているのですが、正直厳しいですよね。【あり得る】という意味では今回の件があろうがなかろうがあり得るわけで、今回のインパクトによりその可能性が増したということは考えにくいと思っています。
大前さんは、新日本製鉄と住友金属工業の合併を引き合いに、シェアの問題からその可能性が高まることに言及していますが、通信の顧客はほとんどが国内在住の消費者と、国内に拠点を持つ法人ですが、鉄鋼の場合は売上比率で海外が上回っていたはずです(すいません、調べてません)。ですので、公正取引委員会が世界シェアという尺度を採用したと言っても、ドコモがKDDIを買収することを容認できるかというとまた別の話しだと思います。また大前さんもご存知のはずですが、NTT法というものがあるので、その法改正がなければ議論さえまともにできないはずなので、夢のような話しだと思います。
ただ、
固定電話時代の法律や公取の考え方を一度オールクリアして、世界を単一市場と見なす全く新しい発想の法体系を作るべきだ。
ということが言いたかったのだと思っています。

その他規制の話し、特にインパクトその1で記述したローミングやサービスの多様化の件に関しては、現代ビジネスの記事、『ソフトバンクのスプリント・ネクステル買収が迫る情報通信政策の開国』に詳しく書かれているのでこちらを参照ください。
あと、記事に対する違和感として挙げておくと、P.1のグラフを見て思ったのですが、ドコモは基本Mobileのみで、KDDIにしてもFixedとMobileでの時価総額ですが、ソフトバンクにはYahoo! JAPANも乗せた評価になるので、不公平感は否めないですね。Mobile単体での評価だと、現時点ではdocomo、au、SBMという評価になると想定しています。

インパクトその4

キャリアよりも上位レイヤーでビジネスしている人々にとってのインパクトを考えてみたいと思います。
と思いましたが、商売ネタなので止めます。すいません。機会があれば(書けるようになれば)また書きます。

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