2014年1月6日月曜日

各社年頭の挨拶を読んで

各社が自社Webサイトで出している、2014年最初のTopメッセージである年頭の挨拶を、日常的にチェックしている数十社分、読みました。(自動車メーカーなどは出てませんでした)
各業界でチェックしている企業が、各業界関心の深く強い順に並んでいます。業界は業界トップ企業の売上高順になっています。
その感想のまとめと、一言コメントを残したいと思います。

各社社名に括弧書きしているのは、日経新聞から取った売上高ランキングです。


■まとめ■

経済環境・経営環境に対する認識としては、2013年の円安、株高を楽観視出来ないという見解。ただし、セブン&アイに代表されるように、だからといってデフレ脱却に向かっていない訳ではいないので、挑戦の年であるという強い意思を数社に感じる。
まずは、この挑戦の意思が注目すべき企業を決めるのではないかと思われる。
(以下からの個人的推薦は、三菱商事伊藤忠商事昭和シェル石油セブン&アイ新日鉄住金三菱重工

以下の企業が業界全体を示す訳ではないが、やはり注目すべき企業であることは再認識したが、今回未掲載の企業については、何らかの手段で、春に向けた動きを探りたい。理由としては、日本企業の多くが、3月に向け事業を展開し、6月の株主総会まで、惰性で動く傾向にあるからだ。もちろんこの傾向認識には異論が多くあると思うが、個人的な見解としては、当てはまることが多い。特に、3ヶ月から1年以内の短期とは言いにくい期間での一定以上(以下の大きさの企業であれば数億円レベル)の投資について、その意思決定が鈍る。ただ、この時期のトップから出ている明確な指針があれば、その意思決定が鈍る度合いが小さくなるのも個人的な見解である。

上記に挙げた6社については、絶え間ない挑戦を感じさせて頂いた。




自動車業界

自動車業界各社については、1/6 15時の時点では、各社ともTopメッセージは出して居なかった。

トヨタ(第1位)

未掲載

マツダ(第47位)

未掲載

ホンダ(第8位)

未掲載

日産(第9位)

未掲載



総合商社

業界としては、資源系トップの三菱商事と、非資源系トップの伊藤忠商事が面白かった。外部環境への言及が明確であり、その環境変化に対するスタンスも明確。2014年のビジネスの進め方を理解するには十分な内容だった。
特に2社には他業界の動きを牽引してもらいたいと感じた。

三菱商事(第2位)

今回読んだ中では最も強気、前向きな印象。それも、
1954年は三菱商事が財閥解体を経て大合同を実現した年だということです。つまり、新生・三菱商事が発足してから今年の7月でちょうど60年になります。
というところからのものかもしれないが、安倍政権と最も近い企業と考えられることからもその強気さが出てくるのではないだろうか。
今後も資源系での利益獲得は確実なものとなるだろうし、非資源系の利益高で伊藤忠に抜かれたこともあり、巻き返しあるのだろうか。


三井物産(第7位)

本来の主旨ではあるのだろうが、社内もしくは関係者に向けたメッセージであるという強い印象を受けた。というのも、キーワードの使い回しに関して理解が難しく、おそらく繰り返し使ってきている言葉なのだろうが、コンテキストが分からないためニュアンスをつかめている自信がない。

ただ、総論としてはこれまでの延長線上に、三井物産の一年を描こうとしているのは感じた。転換期とも言えるだろう2014年を通常通りの1年と捉えて良いのかは正直疑問である。


伊藤忠商事(第3位)

伊藤忠商事は、おそらく最短の挨拶文じゃないだろうか。
また、三菱商事の項でも述べたとおり、非資源系での利益高が躍進していることもあってか、消費税増税について強く触れられている。ただ、その影響については、どうしても精神論的なメッセージに見えてしまい、伊藤忠らしいといえば、伊藤忠らしいのかもしれない。


丸紅(第6位)

三井物産同様、社内もしくは関係者に向けたメッセージであるという印象を受けた。というのも、自社の経営計画への言及や、『3.皆さんに心掛けて頂きたいこと』に大半を割いており、商社としてのビジネスのスタンスを確認することは難しかった。





エネルギー

国家100年の計とは言わないが、国家の盛衰を左右するエネルギー事業。エネルギーは価格弾力性が低いので、淡々と収益を稼ぎ、利益を投資してもらいたいと思うが、自動車の燃費がここ10年強で2倍近くも改善しているということから、収益が厳しいのは事実だと思われる。
自動車以外のエネルギーももちろんあるが、消費が減っていくことが分かっている分野への対応は必須である。

JXホールディングス(第4位)

JX日鉱日石エネルギー()

特に、エネルギー事業の事業会社が重要だと考えているので、JX日鉱日石エネルギーもリンクを掲載した。
ちょっと意外というか、何かあったのか?と勘ぐりたくなる(寡聞にしてそういったニュースは耳にしていない)ほど、コンプライアンス、倫理観という部分に触れている感じがある。
エネルギーという国家を上げてその将来を検討すべき事項を事業の根幹に据えているということもあり、環境、特に政治面での注意を払っているという印象を受けた。

昨年の都市対抗野球での2連覇を受け、JXとしての一体感を個人的には感じているため、安全とコンプライアンスの上で収益を獲得してもらいたい。


昭和シェル石油(第40位)

香藤繁常氏のメッセージが非常に強く、そして心に響いた。内向的閉鎖的な社会へ強く対抗するものに対して、サポートするというメッセージは、これからチャレンジングな事業が興る可能性を感じた。

そして新井純氏のコメントは非常に具体的であり、今年の行動指針として非常にクリアなメッセージだと感じた。

東京電力(第15位)

未掲載(まあ、難しいか)






通信

通信業界としては、エネルギー同様価格弾力性が低いので、景気に左右されることなく、淡々と通信料で稼いで頂きたい。(端末を置換えさせるのは通信規格が変わる時だけで十分)
しかし、光への転換も一服感があり、4Gの普及も見えてきた今、技術革新のロードマップにおいて将来に関する不安があるのも事実。
ソフトバンクの様に通信に限らない動きというのも、NTTやKDDIは成功しているとは言い難い。この辺りについて、2014年の所感を聞いてみたいところではある。

NTT(第5位)

未掲載

NTTドコモ(第19位)

未掲載

KDDI(第24位)

未掲載

ソフトバンク(第28位)

読み終わった瞬間、タイトルを読み返した。昨年については端的にまとまっているが、今年については、(他社と比較して)具体性に欠ける内容だったためだ。
ソフトバンクの対外発表については常に実態を掴ませないものであるというのが個人的な認識なのだが、ある意味孫社長らしい所感なのだろう。




家電

実は、個人的にはこの業種の括りを再整理したいと考えている所である。最初に掲げている日立や東芝が家電メーカーだと考えているのは、純粋なコンシューマだけじゃないだろうか。エレクトロニクスと言えばもう少し広げられるだろうか。エンジニアリングも行う日立であったり、金融やソフトが強くなったソニーなどが家電/エレクトロニクスと括られるのには違和感がある。
なお、自動車メーカー同様、年頭の挨拶は掲載されていない様子。

日立(第10位)

未掲載

東芝(第16位)

未掲載

ソニー(第13位)

未掲載

パナソニック(第12位)

未掲載

キヤノン(第27位)

未掲載



小売

小売は消費者の財布の紐の固さを測る最も良いモノサシと言えるのではないだろうか。やはり景気の回復を喜ぶのはまだ早いという見解ではあるものの、手を打っていくタイミングであるとの認識ではある様子。2014年は小売業界の動きには注目である。

セブン&アイ(第18位)

消費環境について端的に意見を出されているので、必読と言えるだろう。
要旨としては、
昨年来、円安株高が続き、一部で明るい見通しも広がっていますが、景気自体は、決して自律的な回復基調ではないことは明らかであり、今回の消費増税は消費動向に大きな影響を及ぼすと考えられます。
この部分に関しては、手堅い見解を示していると読み取った。また、
日常生活にモノが豊富に行きわたる中で、お客様は急いで商品を買う必要がなく、従来通りの商品はいかに価格を下げても買っていただけない
という見解も、「お見事!」と言わざるを得ないのだが、上記2文の間にある
消費の現場では価格競争の激化が予想されます。
という部分については、なぜ、そこに言及する必要があるのか疑問だ。
とはいえ、イオンと並び、小売2強といえる現在、この見解に基づくセブン&アイの動きが市場を牽引する可能性は非常に強い。
如何に値上げに繋げるか?見ものである。


イオン(第17位)

未掲載






鉄鋼・重電系

新日鉄住金(第20位)

正直、ここまで自民党政権を後押しする直接的コメントには面食らった。ただ続く経済環境・経営環境に対する認識については、日本国内だけで見た場合、合併が認められなかったであろう大合併が、海外市場を見た場合に必要なものであったと再確認できる内容だった。

JXといい、新日鉄住金といい、コンプライアンスをここまで強調するのにはなにか理由があるのだろうか。それとも盤石な経営体制(組織など)を揺るがす最大のリスクだという認識が強いのか。。。
いずれにしてもやると決めたことを淡々とやる強い意思を感じる内容ではあった。

JFEスチール(第29位 ※JFEホールディングスの数字かも)

経済環境への認識については、個人的な見解と相違無いのだが、事業の具体的な指針については、その認識とリンクが弱い様に感じる。マーケットを注視し、柔軟なサプライチェーンを構築することが重要だと思われるが、そこに対する意思表示が弱いと感じた。


三菱重工(第26位)

一言では「手堅い!」という印象だが、その中でもMRJについてはキラリと光る内容じゃないだろうか。手堅い事業の中でこういったチャレンジがある企業というのは、外から見ていて成長期待があるので面白い。