2012年4月16日月曜日

ソニーの新経営方針に対する指摘と個人的な提言

 ソニーの新経営方針を読んでガッカリしたのでそれについてコメントを残したい。
ソニー新経営方針

 先ず一言で言うと「ヤルヤル詐欺」になるとしか思えない。それは、方針記載されている各項が整整合しているとは思えないからだ。
 仮に、この方針作成が、平井新社長の旗振りの下で行われていたとしても、各事業部の顔色を伺ったり、意見を聴くなどといった事をやるうちに崩れた。もしくは、リーダーとして、重複している事に気付けていないかじゃないだろうか。

 よく「グローバルな競争環境において云々」というコメントを見るのだが、販売シェアだけを見て競争に参加していると言ってしまうのは、企業が一人称として発言するにはあまりにも拙いと言わざるを得ない。液晶テレビにおけるシェアにおいてソニーを超える企業としてSamsungやLGはそこできちんと利益を出しています。しかしソニーはどうだろうか。

 そして、そのTV事業を始めとするエレクトロニクス事業が、未だに金融事業やコンテンツ関連事業と同レベル、もしくはそれ以上の売上高、利益高でなくてはならないと思っているのではないかと思う節が多くある。

 さて前置きが長くなってしまったが、まずは新経営方針に対する、私の見解に基づく指摘を行い、その後にその見解に基づくソニーに目指してもらいたい姿を記したいと思う。

新経営方針に対する指摘

 まず上述した”変革のためのエレクトロニクス重点施策の各項が整合しているとは思えない”という指摘について説明したい。

■指摘1.

 「1. コア事業の強化(デジタルイメージング・ゲーム・モバイル)」の項において、 「メディカルなど幅広いアプリケーションに活用することで、デジタルイメージング事業の領域を広げていきます。」と記載されているにも関わらず、「4. 新規事業の創出/イノベーションの加速」の項では、メディカル事業を新規事業として記載している。つまり、メディカル事業の位置付けが不明瞭なままこの方針が作られていると想像するのが妥当だと思える。

■指摘2.

 「2. テレビ事業の再建」の項に、”モデル数削減(2012年度に2011年度比約40%減)”とある。実モデル数が従来どれだけ多かったのかわからないが、トンデモなく多かったというのならまだしも、「3.新興国での事業の拡大」の項にある、”画質・音質の向上や地域ニーズに合わせた商品の投入”を行うには、一定のモデル数が必要になるはずだ。

■指摘3.

 また、「5. 事業ポートフォリオの見直し/経営のさらなる健全化」の項にある、「・損失計上、低収益又は営業キャッシュフローがマイナス」や、「・製品のコモディティ化が進み、成長が見込めない」というポイントで事業性を判断した場合、テレビ事業は真っ先に売却などの判断がなされて良さそうなものが、再建として掲げられている。


 上記重点施策の各項が不整合という指摘以外の指摘としては次のようなものがある。

■指摘4.

 「1. コア事業の強化(デジタルイメージング・ゲーム・モバイル)」という表現が適切ではないと考えている。利益を生み出せていない事業をコア事業と呼ぶのか?現在稼ぎ頭の金融や、コンテンツ系事業(音楽、映画)について触れられていないのは、株主に対する説明責任を果たせていないのではないかと感じている。

■指摘5.

 「4. 新規事業の創出/イノベーションの加速」の項においては、内容としてはメディカル事業と4K関連事業を積極的に進めたいとある。メディカルに進出したいのであれば、端的に言えばオリンパスを買収するしか手はないと思う。4K関連事業が新規事業となるとは思えない(テレビ事業という括りでよいと言う意味)。ということから、実現性に乏しいと感じた。

■指摘6.

 「5. 事業ポートフォリオの見直し/経営のさらなる健全化」については、事業ポートフォリオの見直しの前に、製品やサービスの統合を目指してもらいたい。


ソニーが目指すべき姿は、エレクトロニクス事業が昔のような稼ぎ頭になっただけの姿なのだろうか。今回の新経営方針では、【エレキ再建】だけが謳われていて、結局の所、SamsungやLGに勝てずに転落するイメージしか湧いて来なかったというのが正直なところである。

(ここまで書いていて改めて思うのは、やはりテレビ事業に拘っているのが問題の一つなのではないかと思う。)


ソニーに目指してもらいたい姿(提言)

■提言1. ~ ブランド認知の地域差の明確化 ~

 日本はもちろん、欧米などで、ソニーブランドが今どのように認知されており、どのような認知のされ方が望ましいかを徹底調査、分析、議論してもらいたい。
 また新興国などでのブランド認知をどのように考えるかも同様に議論してもらいたい。

 この時注意してもらいたいのは、それらを統一、統合させる必要はないという事。(必ずしも新興国でソニーブランドで戦う必要はない)

 例えば、日本や欧米などでハイブランドとして認知され、新興国などでは生活に浸透するブランドとして認知される事は、かなり有力な選択肢だと思える。この時、ハイブランドをコーポレートブランドと同一名称にし、もう一方を別名称にするというのはテクニカルな話として別議論で良い。

■提言2. ~ ユーザーの利用シーンに基づくトータルな製品ラインナップ整備 ~

 ソニーに限らず、かなりの日本のメーカーに共通する事であり、以前のソニーはあったのに最近見えてこないのが、自分にとって必要なモノをソニーで揃えるというイメージの湧かない製品ラインナップの状況やロードマップである。
 また、そのロードマップが自分の成長に沿ってくれていない感じも強くなっている。

 誰がどのシーンで使う製品・サービスで、その後どのような製品・サービスと合わせて使うことが想定されているのかをはっきりさせることが重要である。またソニー製品が最も高いレベルでソニーサービスを利用できる状態にすることが囲い込みにおいて重要である。

 例えば、映画や音楽などのコンテンツを利用する上で、ソニー製品(デバイス)かつユーザー登録している製品(デバイス)間であればコピー無限大とすることも可能性がある。ユーザー登録されていて、ある特定個人が所有しているとされれば、私的利用の範囲とするような形もあり得るだろう。(法的な根拠はさておきです、悪しからず)
 そういった、ユーザー登録されたデバイスを上手くサービスに乗せていく、そういった最後の一手間的な工夫をすることが必要とされるのではないだろうか。

■提言3. ~ コンテンツの強みを活かしたビジネスシステムの構築 ~

 Appleは、足りないものを一気に埋め合わせるためにエコシステムを構築するという外部リソースのうまい活用を行った。しかしソニーには20年以上に渡って積み上げてきたコンテンツビジネスが確固たるものとして存在している。なので、その自資源を最大限活用し、パートナーとなる企業を集めエコではない強力なビジネスシステムを構築する事ができるはず。それを目指してもらいたい。

■提言4. ~ パートナー企業の擁立 ~

 提言3にて自資源によるビジネスシステムにパートナーを集める必要性を訴えたが、様々なコンテンツを保有するソニーとは言え、不足する資源を補うパートナーは非常に重要である。
 もちろん、コンテンツビジネスにおけるパートナーは重要であるが、より重要なのは次の要素を補完してくれるパートナー選びだと考えている。

  • バッテリー
  • 通信機器
  • 安価なEMS
  • HEMS専業メーカー/ディベロッパー
  • 企画を推進するプロデューサー

 なぜ、上記が必要だと考えているかについては個別には述べないが、コンシューマビジネスにおいてソニーに不足している要素だと考えている。


まとめ

 最後に個人的な期待でしかないが、ソニーは今のAppleの独走を止めるポテンシャルを十分に持っていると思っている。なので、上記のような期待をしている。是非より高い水準で頑張ってもらいたい。ポイントを抑え、ユーザーに浸透するようなサービス&プロダクトを提供していってもらいたい。